愛を知らないあなたに
あたしの言葉にジンさんは頷き返し、スッと神社の出口の方へ体を向けた。



《琥珀。今から、少し生贄を外へ出す。いいな?》


「はい。」


《うむ。では・・・来い。》


ジンさんはあたしをチラッと振り返った後、歩き出した。



あたしは、何を言われるのかドキドキしながら、後を追った。











◆◆◆




《生贄。おぬしは気付いたのだな。》



鳥居の傍で止まってすぐ。

あたしを真っ直ぐに見据えながら、ジンさんは淡々と言った。



「いきなりそれですか・・・。

というか、気付いてたんですか?」


あたしは恥ずかしくて、視線を逸らす。

ジンさんはそんなあたしを見て、ふっと笑みのようなものをもらした。



「あぁ。我は天孤であるがゆえ、先のことを見通す力がある。

琥珀が言ってなかったか?」


「言ってたような・・・言ってなかったような・・・・・・。

すみません、正直、覚えてないです。

あの、それどころじゃなかったっていうか・・・。」




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