愛を知らないあなたに
《好きだからと言って・・・・・・

囚われてはなるまいよ。


己を―――忘れぬように。

自我を、しっかり持つのだよ。》





己を・・・・・・忘れぬように?


自我を、しっかり持つ?





「どういう、ことですか?」


《食われぬように気をつけろということだ。》


「え?あ、で、でも!琥珀様はおそらくあたしのことは食べないと・・・・・・」


《おぬしの問題だよ。》


「へ?」




ジンさんは、射抜くようにあたしを見据え。


静かに、淡々とした声で言葉を紡いだ。





《琥珀に、食われてもいいと・・・

食われたいと・・・

思わぬように、気をつけるのだ。


どんなに好きでも、忘れるな。

琥珀は鬼であり、おぬしは人間であるということを。》





ジンさんの言葉に、あたしの心はぐらぐら揺れ始める。




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