愛を知らないあなたに
なんで・・・・・・・


なんで、伝わらない?




呆然とするあたしを、琥珀様は絶対零度の瞳で見つめ返す。


「生贄が鬼に恋をするなど、ありえない。」


「・・・・・・そ、んな・・・決め付けないで・・・」



冷たい声は、いつもと同じなはずなのに、心は痛い痛いと悲鳴を上げる。

あたしの声は、情けなくもかすれていた。




「決め付けるな?何を言う。

鬼は怖れられる存在であろう?人は鬼を怖れるのであろう?

そんなこと、遥か昔から決まっている。」



あぁ―――。


あたしは、琥珀様の中で、生贄でしかないのだ。



唐突にそれを突きつけられた。


たとえ食べたくないと言ってもらえても、所詮は生贄、ただの人間。



琥珀様は、そうとしか思ってない。

“凜”というたった一人の者として、扱ってはくれないんだ。



“人”というくくりでしか見てはもらえないから・・・・・・

自分は怖れられる存在である以外の、何者ではないと言うんだ。



あたし個人の思いなんか、考えなんか、気付かずに。





そう気付けば、やってきたのは悔しさだった。



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