愛を知らないあなたに
いや、そもそもここへ来たのだから喧嘩をしたということは明白であったな。




「で？噂とはなんだ？」


俺はふと気になったことを聞いてみた。

すると薺はさも面白そうに、にんまりと笑う。



「琥珀がまだ生贄を食べていないっていうことよ！」


「あぁ、そのことか。噂にまでなっていたのか。」


高らかに紡がれた薺の言葉に俺が1つ頷くと、薺は呆れたように俺を見た。



「噂にまでなっていたのかって・・・そりゃそうでしょうよ。

一体どういう風の吹き回し？生贄を食べないなんて、さ。」




その問いかけに、俺はただ首を横に振った。



「・・・・・・分からぬのだ。

なぜ生贄を食わぬのか、俺自身が全く分からぬ。

だが、食えぬのだ。食いたくないと思うのだ・・・。」



薺は俺の困惑したような顔を見て、「ふぅん・・・」と呟いた。


「成程ね。まぁ、なんとなく分かったわ。

へぇ・・・でも、琥珀がねぇ・・・・・・。」



意味深げに呟いた後、彼女はニヤリと笑って言った。


「なんか、面白いわね！

ふふふ。なんか色々かき回そうっと♪」




・・・・・・・嫌な予感がするが、気のせいだ。
たぶん。





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