愛を知らないあなたに
当惑が滲み出た声に、俺自身が驚いた。

本当に、どうしてなんだ・・・・・・





「へぇー。噂は本当だったんだぁ。」


思わず眉をひそめたとき、後ろの方で色気を含んだ声が聞こえた。



俺は振り返り、鮮やかな紅い着物を着た美しい女が立っているのを確認した。

そして、ぐっと眉間にしわを寄せる。



「薺(ナズナ)・・・。」


「お久しぶりね、琥珀。なによ、その眉間のしわは。」


くすりと艶っぽく笑い、薺は綺麗な人差し指を、俺の眉間につんと当てる。

俺はただじっと薺を見て、一言言った。



「またか?」


「ふふ。えぇ、そうよ。駄目かしら?」


返事は分かっているというように彼女は悪戯っぽく言う。



「・・・駄目ではないな。」


俺はいつも通り、あっさりと答えた。

薺は楽しそうに笑い、言う。


「そうでしょうね。なんてったって琥珀だもの。」


「あぁ。だが、赫(カク)は怒るのではないか?」


「あら、知らないわよあんな男。」


つんっとそっぽを向く薺。

どうやら赫と喧嘩をしたらしい。




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