愛を知らないあなたに
タマが肩をすくめて、おどけたように口を開いた。



「さぁ~?どうでしょ~」


「いや、ないね。」


あっさりと答えたあたしの言葉に、タマが目を瞬いた。




「なぜそう思う?」


「だって、薺さんが・・・・・・・」



ねぇ、タマ、どうして?


どうして――



「薺さんが、泣いていたから・・・」




薺さんは、涙を流していたの?


初めの衝撃が過ぎたそのときに、気がついた。



薺さんの瞳から、かすかに光る涙が流れているのを。




かすかに耳に届いた。






「新太郎様と、小さく呟いていたから・・・・・・。」



何度も、何度も。


小さく、震えた声で。



涙を流しながら。




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