愛を知らないあなたに
状況が理解できていないらしいリンは、パチパチと目を瞬いている。


「悪かった。お前はリンだ。

ただの人間じゃない。リンだ。


俺の、特別な人間だ。」



思わず笑みが浮かんだ。


そう、そうだ。特別だ。



リンは、特別なのだ。





なんで今まで気付かなかったのだろう。


名前はこの世にたった一つしかないモノだという印だと浅葱が言っていたのに。

俺は生贄の名前を知っていたのに。


他の人間なら、生贄なら、とっくに食っていたのに。



目から鱗(ウロコ)が落ちたとは、まさにこのこと。



「人間で、いなくなると嫌だと思ったのは、リンが初めてだ。

そう思うのは、特別だからだ。


なぁ、リン」



自然と頬が緩む。


あぁ、そうか。もしかして、これが。




「俺もおそらく・・・リンが大切なのだな。」




――大切だということか。




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