いちごパンツのポートレート

毎年呼んでもいないのに誰よりも早く来て食事をせがみ、

誰よりも長く居座る学がまだ現れない。

年明けにも正式に社長の養子になる学は今までのように我が家に来ることはなくなるだろうと予想はしていた……

それでもひと言挨拶があってもいいんじゃないか!と思う私は料簡(りょうけん)が狭いのか?

イライラしながら作業を進めていく私を部屋に呼んで母がこう言った。


「舞衣のしてくれていることには口にこそ出さないけどみんな本当に感謝してる。

それでも嫌々やって貰ってはちっとも嬉しくないから何処かで頭を冷やしてきなさい。

あなたが居なくてもなるようになるから心配しないで……

さぁ早く準備しなさい」

母の言葉に唖然とした。

この家は私が居なければちゃんと回らないと、どこかで驕(おご)っている自分がいたから……

父の所へ行き2日間留守にすることを伝え、朝食の席に付けないことの了承をもらう。

読みたかった本数冊と蓮兄のとっておきの赤ワイン2本をくすねて財布と携帯、替えの下着を小さなボストンバッグに詰めて家を出た。

向かうはシティーホテル



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