背徳の薔薇

「気持ちよかった」

僕の腕の中で、さっきまでの余韻に浸りながら千夏が呟いた。

「僕もだよ」

そう言って、彼女のおでこにそっとキスをする。

「わたしのこと、好き?」

上目遣いで僕を見る。

「好きだよ」

そう言ったとたん、ふと胸に隙間風が入ってきた。



僕たちには、決して交わさない言葉がある。

それは、「愛してる」。

なぜなら、その言葉を言うべき相手がお互いにいるからだ。


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