繋いだ手を

私たち総務課のメンバーも、研修期間中は新入社員と同様ジャージで過ごす。但し、ひと目で総務課メンバーだとわかるように腕章は忘れない。



ジャージに着替えたら、これから自分が研修を受けるような、新入社員に戻ったような妙な気分。



先輩社員たちからも、
『新入社員に紛れて研修受けていても全然不思議じゃない』と言われる始末。
確かに新人研修を受けたのは去年だから、まだ記憶は鮮明。



だけど、私だって早く先輩として認められたい。



新入社員が講義を受けている教室の一番後ろで、私は総務課の先輩社員と講師の補助として控えている。



外部から招いた専門の講師が、社会人としての心得やマーなど基本的なことから、自己啓発や働く上での目標意識について細やかに指導してくれる。



講義を聞き流しながら、視線が捉えているのは坂木君の後頭部。



見たくて見ているんじゃない。
どんなに他の場所を見ていても、視界の中から坂木君の頭が離れてくれないだけ。


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