ダメ男依存症候群 EXTRA

 あれは、シュンを飼い始めて半年くらいだっただろうか。

 やっとお手とお座りを覚えてきたぐらいの時。


 休みの日に、ベランダに干していた洗濯物を取り込んでいた時。


「あっ……」

 部屋に洗濯物を持って入ろうとした時に、手に持っていた洗濯ばさみが落ちて、部屋の真ん中の方に滑っていってしまった。


「ワン!」

 すると部屋の隅で伏せていたシュンが反応して、洗濯ばさみが落ちているところに行く。


「あっ、ダメよ、シュン!」

 小さいし、飲み込んだりしたら大変だ。

 あたしは慌てて注意すると、シュンは私が思ったことと違う行動をした。


 床部落ちている洗濯ばさみを口で拾い、あたしの目の前までやってきて、ちょこんとお座りをした。

 試しに手を差し出してみりと、シュンはあたしの手のひらの上に、洗濯ばさみを置いた。


「すごい! 偉いね! シュン」

 あたしはシュンの行動にはびっくりしすぎて、もう感動に近かった。


 今まで、物を投げて取ってくるように教えてはいたけれど、上手くいったことの方が少ない。

 何も言ってないのに物を拾って持ってくるなんて、できるとは思わなかった。


 首を撫でて褒めると、シュンは気持ち良さそうに目を細めて、パタパタと尻尾を振っていた。



 ここまではよかったけれど、シュンはとんでもないことをしたことがある。




「シュン。ちょっとコンビニ行ってくるね」

 ある日、牛乳がなくなってしまったので、ちょっと買い物に行こうとして、シュンに声をかけた。


 出掛ける準備をしていたからか、シュンは散歩用のリードをくわえてやってきた。


「散歩じゃないよ、シュン。散歩は後でまた行こうね」


 シュンの散歩は、いつも夕方か夜に行く。

 今はまだ三時前。

 別に今からでも悪いわけではないけど、今は色々とやることがあるから、ゆっくり散歩のコースを回ってられない。

< 98 / 129 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop