通勤電車に咲く花は
「あっ!」 
子犬みたいな笑顔になった。犬が笑うのかどうか、知らないけれど。
「待ち合わせ、しましょう。」
「その場所、知りません。」
「え?まだ待ち合わせ場所、決めてないですよ?どこがいいかなぁ。思い切ってベタに東京駅銀の鈴とかにしましょうか?」
何故そこで?
今どきの若者はそんな場所、知らんだろ?
「うん。そうしたら、あなたがいつも降りてる駅からも近いし、ちょうどいい。時間は、そうだな、7時でどうですか?」
「無理です。」
「大丈夫ですよ。銀の鈴なら、駅員さんに聞けばすぐにわかります。」
「いや、だから――」
「あ、電車来ましたね。」
「はい、いや、あのね」
「あぁ、やっぱり混んでますね。」
何でだ。あたしが、口から生まれたと言われている、このあたしが誘いを断れないなんて。
「嬉しいな。すごくおいしい和食のお店があるんです。あ、お酒、飲めますか?」
「お酒、好きです。いや、そうじゃなくて」
「そのお店ね、日本酒がすごく充実してるんです。」
あぁ、なんだろう。調子が狂う。おかしい。あたし、具合悪いのかな。
いつの間にか、また腕の中に囲い込まれてるし。
力入ってぎゅうぎゅうしてくるし。
「明日、楽しみですね。」
いや、ちっとも。

だから!頭に顎乗せるなっ!!

=fin=
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