不条理な恋でも…【完】
俺はほのかから少し身をはなすと頬を両手で包み込んで

ゆっくりとこちらに向けた。

真っ赤に上気したほのかが、

視線をそらしたまま俺の手のひらに収まっている。

「かわいいな。そういう所も…」

ゆっくりと顔に近づいていき、おでこにチュッと触れた。


我ながら、どうしてこんなにも奥手なのだろうか…

そのまま唇に触れてしまえばいいものを、

一瞬戸惑ってからその標的を額に変えた…

ほのかは俺に頬を包まれたまま大きく目を見開いている。

このぐらいで驚かれたら、これからどうしたらいいのだろうかと、

その瞳に浮かぶ驚きの大きさを見つけて少し怯む。

そうしているとほのかがギュッと瞼を閉じた。


それは俺にとっては、好きにしてもいいという合図だと思い、

右手は頬を包んだまま左の掌をいったん引き、

後頭部に回してやさしくこちらに引き寄せた。


躰の力を抜いたほのかは、目を閉じたままゆっくりとこっちに飛び込んでくる。


その身体を顔の角度を変えてまずは唇から受け止めた。

柔らかい…

ほのかが俺に身を預けて、優しく唇を押し付けて

触れるだけのキスを受けてくれている。

唇は誓いのキスが初めてだったから…

抱きしめながら年甲斐もなくドキドキしてしまう。

俺も目を閉じて、ただ全身にほのかの全てを感じようと

神経を研ぎ澄ませた。
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