不条理な恋でも…【完】
ほのかの誕生日の夜、俺は彼女と食事に行くためにアパートを訪れた。

呼び鈴を鳴らし、ほのかがでてくるのをドアの前で待つ。

「大希さん…」

ドアを開け俺の前に姿を見せた彼女は今日も愛らしかった。

俺はその年初めてこぼれんばかりのミモザの大きな花束を持って、

ほのかの前に現れた。

それはほのかへの今までの募る思い…

花1つ1つが、ほのかに捧げられた愛だった。


『どうして…』

目の前のほのかは目を見開いて驚き、ドアのノブを持ったまま固まった。

とたんに俺は自信がなくなってしまう…

でももうここで思い切らなければ、いつまでたっても何も変わらない…

だからあえて花束を持ってここに来たのだから。


「あいつが忘れられなくていい。あいつへの思いを無理矢理失くさなくていい。

それでいいから、ずっと俺のそばにいてほしい。

俺は君を置いてどこにも行かないから…」

開口一番俺は彼女に伝えたかったことを口にした…


なんて情けない姿だろうか…

でもこれが俺にできる精一杯だった。

今までと違うシチュエーションにいくら鈍感な彼女でも

さすがにこれがプロポーズだということに気が付いているだろう…

『大希さん…』

俺は震える手でほのかにその花束を差し出す…

受け取ってくれるかどうか、まずはそれが不安だった。
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