不条理な恋でも…【完】
押し付けられた唇で、私自身への罵詈雑言を全てのみ込んでしまった…


「焦る気持ちもわかる。お前も決して若くはないから…

こんなもの読めば余計に焦るだろうな」

視線を紙に向ける。

そう、30代の妊娠率は、20代のそれと比べれば格段に落ちる。

今時30代後半でも40代でも妊娠出産している時代とはいえ、

生物学的な事実は変わらない。

そんなものを見せられたら、ほのかなら…


「でも、それはこの俺と家族を作って未来を考えていてくれているって

いうことだよな?それが嬉しいんだよ…

だから、いずれわかる事なら、今、俺にも調べさせてくれ。

俺が原因なら俺にできることはしたい…

なんで夫婦なのにほのか1人が辛い思いをしなきゃいけないんだ?

それっておかしいだろ?俺は…

俺は、お前一人だけが何もかも抱えて、

お前一人が辛い思いをするのは…

嫌だ」


もう一度抱きしめ直してくれた身体は…

震えていた。

「ごめんね…

ごめんね…」

「謝るな。気が付けなかった俺が情けなくなる…」

「…」


それから次の予約の時、大希さんは私と一緒に病院に行った。

私達がその後、瑞希と出会うまではそれからずいぶん長い時間が必要だった。

それでも、この始まりがあったからこそ…

【つづく】
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