青春を取り戻せ!
「正当な手段で借りるんじゃないよ!」

「じゃ、盗んでくるということ?」

「盗むんじゃなくて、正確に言うと、一時黙って借りておくということだよ」

「そういうのを世間じゃ、盗むと言うのよ」

彼女は驚くの二重という顔をした。どういう顔かというと、真丸になった瞳が寄ってきて半分隠れてしまった。

「All right じゃ盗んできてくれ」

「うーん。条件があるわ」

「何だい?」

「それは、私を抱いてくれること」

彼女は勢いで言ってしまった後、またたく間に真白な頬をピンクに染めた。

僕は冗談で答えていいのか、本気で対応すべきか、彼女の表情をさぐった。

彼女はピンクに上気したままだったが、真丸だった目の端から徐々に皺が現れ、閉じた口元が緩んできた。

僕は安心して、しかしギュンと締まった心臓に本当に安心だけなのかと聞かれ、答えを出す前に、
「これでいいかい?」
と言いながら、彼女を抱き締めていた。

「こういうのじゃないの」

彼女は腕の中で、すねたように言った。

「じゃ、こういうのは?」

彼女のウエストから手を回し、足が宙に浮くまで抱き上げた。

「いやん!子供じゃないんだから」

僕らはしばらく大声を上げて笑った。
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