青春を取り戻せ!
彼女は白いブラウスに紺スカートという、一見して図書館員とわかる格好をしていた。

歳は20代の後半に見え、背が高く痩せていた。

実際の身長は165前後といったところだろうが、痩せすぎのためか必要以上にノッポに見える。 

そしてどことなくカマキリに似ている。

カマキリは犬があまり好きではないようで、数メートル手前で立ち止まり、

「駄目じゃないですか!犬を入れちゃ」

「だって門の柱につないでおいたのに、ほどいて来ちゃったんだもん」

「すぐ退館しなさい!他の人の迷惑です!」

カマキリの怒鳴り声に、少年は泣き出しそうな顔になった。

「そんなこといっても、…まだ終わってないんだもん」

「何が終わってないか知らないけど、規則は規則です。動物を連れてきた者は退館してもらうことに………」

カマキリは腰に手を当てて足を開き気味に立ち、小言を続けている。

眼鏡の奥は吊り上り、口はへの字に曲げられ、スカートからのぞく足はまるで、ドラキュラに吸われた残りカスのようだった。

髪は無造作にまとめられ、『ちょっとそこまで』と買い物に行く三児の母のようだった。

色気をとうに放棄してしまっているように見える。

しかしこういうのに限って、ちょっと肩を触られたぐらいで、セクハラと騒ぎ立てることが多い。

…クワバラ。クワバラ。
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