青春を取り戻せ!
彼女は話の半分以上はチンプンカンプンだったと思うが、予想通りあくびもせず、最後まで真剣に聞いてくれた。

「ねぇ、良かったら私の兄に相談してみない」

「えっ何を?」

「だから今の話。それを製品化したいんでしょ?」

「そこまでは考えてないよ。それより計算通りの薬効が期待できるか、じっくり研究したいのさ」

「でも、それが計画通りだったら、苦しむ患者のためにも製品化しなくちゃ」

僕は予想外の対応に面食らいながらもうなづいていた。

彼女は善は急げと言って、電話に走った。

そして、戻って来ると、
「丁度良かったわ。暇を持て余してるみたい」
と言うと、ハンドバックを抱え立ち上がった。

彼女の赤いアウディの後を、僕の中古の白いサニーが続いた。

これじゃ車のバランスが取れないよ、と一度言ったことがあったが、嫌味なく、置き換えるとドイツでのサニーがアウディよ、と言ってくれた。

僕は車とはあくまでも移動させる機械で、そんな物にお金をかけるのは愚の骨頂というポリシーを持っていた。

だから分不相応の車を乗り回している人より、ボロ車を綺麗に使っている女性に好感を持っていたが、そのポリシーは捨てることにしようなどと考えている内に、アウディのウィンカーは狭い路地を指し示した。

二棟向い合うように全く同じくくすんだ灰色のマンションが並ぶ中庭に入って行った。

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