青春を取り戻せ!
イオン交換樹脂は人体に吸収されないので副作用は考え憎い、それよりいつも物静かな教授が大きな声で、それも皮肉を言ったのがショックだった。

その晩、レストランで未美と会っていた。

食事をしながらも、心は教授との会話を思い出していた。

今まで怒られたことはなかった。そして僕の知る限り、怒ったのを見たのも一度しかなかった。

それは髭が自慢で人の良い水島講師が、採料ビンに入れておいた教授が1週間かけて精製したアルカロイドを、他のビンと一緒に洗ってしまった時であった。

教授がトイレに行っている僅かの間に、ビンの中身は不純物一切なしの蒸留水の水滴になっていたのだ。

教授は烈火の如く数分間怒った後、萎(しお)れたように静かになってしまった。

講師は元よりまわりにいた連中も、おそらく教授自身も驚いていたと思う。

みんな怒られるのに馴れていなかったし、教授は怒るのに馴れていなかった。

(そうなんだよな。普段から免疫ができてれば、こんなショックを受けなかったと思うんだよな…)

「ねぇ、さっきからなに考えてるの?」

「あっごめん。何でもないんだ」

「嘘!? かなりおかしいわよ」

今日のことを残らず話した。
彼女だったら真剣に聞いてくれると思ったからだ。
そう考えたのは、心を許し甘えている証拠なのだろうと、話しながら感じていた。


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