青春を取り戻せ!
その事を白木に話すと、僕が約1年前から頼んでおいた研究員を今頃になっていっぺんに5人も入れた。

そして彼らに“イオンパイン”と名付けた例の薬の急性毒性や慢性毒性、癌原性試験、肝に及ぼす影響などの試験を次々にやらせた。

急速に“イオンパイン”は僕の手から離れていった。
一抹の寂しさから何日か仕事が手につかなかった。


僕は普段未美とは会社で会っているので、日曜日はボンと優紀と一緒に過ごした。

雨の日は中学2年になった優紀の勉強を見ながら、もう体だけりっぱな大人になったボンを隣で遊ばせた。

晴の日はテニスやハイキングなどで過ごした。

一度テニスクラブで間違ってボンをなぐってしまったことがあったので、ボンはテニスが嫌いのようだったが…。

その日は、最近忙しくてボンの面倒をみてやれず、優紀に任せ切りだったので、罪滅ぼしに少し遠出して妙義山に行った。

優紀に元気のないことを聞かれた。

僕は正直に仕事のことを話した。

「超ラッキーじゃない。タツローの手を離れたということは、もう誰でも出来る、想像力のいらない仕事が残ったということでしょ?」

軽く頷いた。

…彼女は時折、拝聴に値する鋭い意見を述べる。

「だったら、ライフ・ワークとか言ってた老化の研究に移れるじゃない」

「……そうか!?そうだよな! サンキュウ!」
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