青春を取り戻せ!
「ボン大丈夫だよ。この人たちは悪い人じゃないんだ」

と、僕は言い聞かせた。

次に皮の鎖を縛ってある柱が軋むほど、がむしゃらに吠えているボンの頭を撫ぜようとした。が、両腕を掴んでいる二人の私服がそれをさせなかった。

「ボン大丈夫だよ。すぐ戻って……」

言葉が終わる前に、引き摺られるように外に引き出された。

「ちょっと待ってください!容疑者のような扱いはしないでください」

「…もちろん、してないよ」

中年の入口に足を踏み入れたくらいの、くたびれた茶色の背広を着た刑事が言った。

「それでは、玄関に鍵を掛けさせてください」

「必要ないだろう?調査がまだ残ってるし、パトカーの置いてある所じゃ、泥棒も遠慮するだろうからな」

中年の刑事の二カッと笑った歯ぐきに血が滲んでいた。たぶん歯ソーノーローか歯周病にかかっているのだろう。 

確かに歯ソーノーローの言う通りだが、本当は、尚も吠え続けているボンに別れが言いたかったのだ。
でも、参考人として事情を話しに行くだけだから、ボンの夕食の時間までには戻れるだろうと考え直した。
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