青春を取り戻せ!
両側の渋滞気味の車線とは対称的に、僕らの車線はサイレンの威力でプライベートロードのようだった。
しかし、ボンが50mぐらいに話されたところで一台、また一台と他の車が割り込んで来た。

ボンの白い体が四台後ろからチラチラと覗けた。

前方に交通量の多い国道との交差点が見えた。

信号は青だった。

交差点の手前15mほどの地点で黄色に変わった。

しかしパトカーは速度を緩めない。

このまま直進する気だと思えた。

「やめろ!止まってくれ!」

刑事たちは聞こえていないかのように前方を見つめたままだ。

赤い車の背に一瞬、ボンの精悍に立てた白い尾が輝いた。

その時、信号が赤に変わった。

「止まれ!犬が交通事故に巻き込まれる!」

僕は夢中で叫んだ。

しかしパトカーはサイレンのボリュームを上げ、猛スピードでとばしつづける。

そしてそのまま交差点に突っ込んだ。

交差点の両側に一杯に並んだ車の群れは、息を潜めた猛獣のようだった。
邪魔者が消えた瞬間に飛び掛かるタイミングをうかがっていた。

刑事たちの取り澄ました顔が一瞬、般若(はんにゃ)に見えた。

僕は掴まれている両肘を体をよじって振り解くと、運転手の首を手錠の両手で絞めた。
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