青春を取り戻せ!

そして震える手で指示された所に署名、捺印した。

裁判長が彼女の緊張をやわらげるように優しい声で明瞭に諭した。

「宣誓をしたうえで嘘を言うと偽証罪の制裁を受けることになりますから、気をつけてください」

彼女の返事が終わるのを待ちかねたように、僕の弁護士が自信に満ちた表情で彼女の斜め前に立った。

「証人は被害者の刺殺された26日の午後10時には、どこにいましたか?」

(そうだ!はっきり言ってやれ!憎い検事に向かって)

彼女はつづいている緊張のためか、しばらく下を向いて黙ったままだった。

僕にはその数秒が何時間にも感じられた。

(早く、そのとき僕の寝ていた隣の部屋で、食事の後片付けをはじめた処でしたと言ってくれ)

「どうしたんですか?その時間に誰とどこに居たのですか?」

弁護士が催促した。

(どうした?早く……!)


彼女が顔を上げた。

おどおどした目から、鋭い目付きに変わっていた。

裁判長を見つめると、口をゆっくりと開いた。

「私は、その日のその時間、………自分の家でテレビを見ていました。

…そんな馬鹿な!?
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