青春を取り戻せ!
これをコピーして町のあちこちに貼ってみようと思っています。

P.S 体に気を付けて早く帰って来てください。
タツローを信じている人がいるということをお忘れなく。 ――――


その手紙は所々涙のために滲んでおり、聡明な優紀には珍しく感傷的な文章だったが、それだけに心を打たれ、勇気付けられていた。

それを読んだすぐ後、ボンのいなくなった交差点の地図を書き、近くの保健所に捕獲されていないか調べてくれとお願いした。

それから、僕がここ何年間か忙しくて食費ぐらいしか使わなかったために、二百万円ほどたまっている貯金通帳と印鑑の隠してある場所を教えた。

これでボンの捜索費と、見付かったら養育費として使ってくれ、それから僕に何かあったら、または君がお金を必要とした時、一緒に置いてある土地の権利書を使ってくれ、と書いた二通目の手紙を出した。

六日後に返事がきた。

―――― 交差点の近所のお店にボンを見なかったか、訪ねて回りました。しかし、見た人は見付かりませんでした。

でも吉報があります。
タツローの恐れていた車に轢かれたのでは?という心配はないと思います。交差点の前のタバコ屋のおばあさんが愛犬と一緒にその交差点を挟んだ公園に、毎朝散歩に行くということですが、タツローの連れて行かれた日から今日まで、犬の死骸どころか、ネズミ一匹死んでいなかったと言っていました。
それからお父さんと一緒に保健所回りをしましたが、ボンはいませんでした。

きっとどこかで元気に生きていると思います。…あんなにいい子が死ぬなんて、そこまで神様も意地悪ではないと思います。
これからも休みごとにボンの捜索に行ってみるつもりです。
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