青春を取り戻せ!
さらには、例の薬を奪うという一石二鳥を実行したと推測できた。

わずかの救いは、人類に貢献どころか滅亡を早めると思えるあの薬をすでに処分した後だったということだけだった。

ボンの天を翔ける雄姿が浮かんできた。

…唯一構造式を残した首輪をしたボンの行方が心配だった。

ボンのことだから無事に帰り着き、優紀に育てられていると信じたかった。

それらの事を、月明かりの中で優紀と彼女の両親宛てに切々と書いた。


五日後に優紀からの手紙が届いた。

―――― 私は無実だと固く信じています。
タツローのことは今では誰よりも私が知っていると思っています。
13、歳は離れていますが、タツローの爪襟をした高校時代、ハマトラの格好をいつもしていた大学時代、そしてマスター時代等々、………私は幼少の頃から、優しい兄として、時には尊敬できる先生、または愉快な友として、ズーとタツローを見つめてきました。

私は誰よりもタツローを知っています。あなたが誠実で、優しく、虫も殺せない人だということを……。

私は少ししか見たことはありませんが、あの綺麗な人は初めから嫌いでした。
何か、うさん臭いものを感じていました。…今だから言うわけではありません。ボンも私もあの綺麗な人は好きにはなれないという直感を感じていました。たぶんあの人もボンが好きではなかったと思います。タツローはあの人に夢中だったから、何も言えなかったけど……。

話は変わりますが、ボンはあの日から帰って来ません。
私はタツローが誰か信頼できる人に預けていったとばかり思っていました。
今、ボンの似顔絵を書いているところです。
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