ここにいるよ
お前のせいじゃない



「や、止めて!」

あれから、どのくらい時間が過ぎただろう


時間にすればたった10分ぐらい


でも忍が殴られてる時間は本当に長くて気が狂いそうになる


何で?

忍が殴られなきゃいけないの?


何度も止めに入るけど忍から、来るなって言われた


あの綺麗な顔がボコボコになり血も出ている


痛々しくて見てられない

涙で彼の姿が見えない


容赦なく大川さんは、彼を殴る


ひたすら殴る


「もう、いいじゃない!私はどうなってもいいから!もう殴らないでっ…」


泣きすぎて腰が抜ける

座り込み必死に訴える

無表情にただ殴られてる彼が助かるのなら自分はどうなってもいいと本当に思ったんだ



「だってさ…どうする?原田?」



殴りながら問い掛ける大川は悪魔に見える


誰か…助け…て

このままじゃ、忍が…

私の大好きな忍が…死んじゃうよ………


「し…の…」

泣きすぎて声にならない

無力さに歯痒くて口唇を噛み締める


「………」

たまに血を吐く忍をただボーと見ていた


視界がぼんやりして脱力する



「……何で、やり返さねぇんだ?お前、モデルだろ?大事な顔、傷つけてもいいのかよっ!」


余りにも反撃しない忍にイライラしたみたいで殴る手を止め忍の胸ぐらを掴んだ


「………だ…」

「あ?」



「顔なんかより大事なモンがあるんだ…渚が何かされるぐらいなら幾らでも俺は殴られるよ」


「………」

忍の決意に怯む大川は殴る手を止めた


「……そ、そんな目で見んなっ!」


鋭く決意した強い眼差しで大川さんを見据える


何故だか分からないけど大川さんは震え怯え出した


「……何でお前なんか」

「………」

二人の周りは異様な空気が流れる
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