優しいカレの切ない隠し事


それは、きっと聖也の偽りのない気持ちに間違いない。

だけど、あんな別れ方をして、まだわたしに会いたがってくれるのは、素直に嬉しかった。

それでも、その気持ちに応えることは出来ない。

じゃなきゃ、3年前、聖也を傷つけて別れた意味がないもの。

「かけなおさなきゃ」

聖也の気持ちには応えられない。

それを分かって欲しくて、敢えて無視をした。

「おい、陽菜!真面目に聞けよ。はぐらかすなって」

「真面目に聞いてるよ!3年前に別れを言ったのは、わたしだって真剣だったの!今さら、聖也に何を話すことがある?わたしは、やり直す気なんてないから」

ごめんね、聖也…。

本当は、こんなことを言いたいんじゃない。

なんとか圭介に電話をかけ直そうとするけど、手が震えてしまってなかなか出来ない。

そんなわたしからスマホを奪い取った聖也は、真っ直ぐに見つめた。

「何で泣いてんだよ。やっぱり、隠してることあるよな?陽菜の泣き顔を見て、オレは知らない振りなんて出来ない」

「聖也…」

そしてその後、わたしたちの唇は重なった。

結局わたしも、圭介を裏切ってしまったのだった。
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