優しいカレの切ない隠し事


ーーー圭介の部屋は15階にあって、バルコニーからの眺めがいい。

この場所から、今までどんな人と夜景を見ていたんだろう。

なんて、どうしてこんなに気になっちゃうのか…。

「あー、今夜も疲れたな」

バルコニーで夜風に当たりながら、圭介は手すりにもたれている。

時刻はすでに午前2時。

仕事が遅くなり、会社から近い圭介のマンションへ、わたしも帰ってきたのだった。

「ホントだよね。だけど、徹夜じゃないだけマシ」

そう言ったわたしは、圭介の背後から手を回す。

背中に頬をくっつけると、鼓動が聞こえてくるみたいだ。

「確かに、徹夜じゃないだけマシか。陽菜、今夜はもう寝るぞ?」

「うん。ていうか、わたし別に誘ってないよ。圭介ってば、意識しすぎ。わたしは単に、こうやって体をくっつけたいだけなの」

そうだよ。

二人の何気ない思い出を、増やしたいだけなんだから。

ここから見える夜景は、わたしとの思い出。

圭介に、そう思ってもらいたい…。
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