右隣の彼

事前準備

「あらやだ!珍しいじゃない。たまには顔出しなさいって言えば来ないくせに
 どうでもいい時に帰ってくるんだもん。晩御飯のおかず・・・あんたの分ないわよ」

「別に晩御飯食べに来たんじゃないし・・・」

何ヶ月ぶりかの実家。
今住んでるところから電車で1時間もかからないから顔をだそうと思えば
いつでも出せるんだけど、ここ3年くらい実家に帰るたび私の同級生の結婚や出産の話を
嫌味なぐらいに出す。遠まわしに仕事ばかりじゃなくて恋愛とか結婚考えろってことなんだろうけど
そういう相手がいなかったんだからどうしようもなかった。

だけどそんな私の状況は大きく変わった。
恋人と呼べる人ができた。しかもその人から付き合って数ヶ月でプロポーズをされた。

だから今日はその話をとりあえず岸田くん抜きで話をしたくて
帰ってきたのだ。


「え?俺抜きで実家に行くの?」
1週間前、岸田くんの家にお泊りした時彼が私の実家に・・・両親に挨拶をしたいと
言い出した。
結婚するんだから挨拶はしなきゃいけないけど
そこに問題ありなのだ
うちの両親が堅物だから絶対結婚に反対する・・・・ならドラマみたいな展開だろうけど
どちらかというと真逆と言ったほうがいいのかもしれない。
とにかくうるさい・・・いや賑やかな人なのだ。
自慢するわけではないが私の父は客観的にみてイケてるオヤジだ。
20代の頃の写真を見せてもらったことがあるが、かっこいい。
母は・・・・中の限りなく下に近い中(中の下と言うと怒るので)
ちなみに私は母親似だと思う。
どうして父は母を好きになったのか未だわからないが
とにかく母は超面食いで常にハイテンション

そんなうちの両親に岸田くんをいきなり合せたら
もうお祭り騒ぎどころじゃないと思う。
特に母に関してはこの超絶イケメンにメロメロになること間違いない!
その勢いで何を言い出すかわかりゃ~しない。

怖すぎる
本気で怖い。
だから事前に話をつけてから改めて2人で挨拶に行こうと決めていたが
岸田くん曰く
「早く一美のご両親に結婚の許しを得たい!一美を産んでくれたご両親に会いたい」
って歯の浮くようなセリフをさらっと言った。

「絶対ドン引くよ。私でさえも引くんだから」
でも岸田くんは引くわけがないと自信満々で今からでも行こうかくらいの勢いがあったが
なんとかなだめて今私は久しぶりに実家に帰ってきたのだ。

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