右隣の彼

悔しいけど・・・大好き

こんなに緊張したのは何年ぶりだろう。
案の定昨夜は緊張でなかなか寝付けなかった。
岸田くんは私の気も知らないで完全に熟睡だったけど・・・

5時に起きても心の準備はまだ不十分。だけど腹をくくるしかない。
効果があるのか不安だが少しでも若く見られるようにといつもの倍の時間をかけメイクをした。

「・・・・少しは若くみえ・・・ないか・・・」
鏡に映る自分を見てため息が出る。

そして
パソコンの前に二人で並んだ。

「あ~~こんな朝から緊張するの嫌だ~~」
つい弱音を吐いてしまう。
「もう~。そんなに緊張しなくていいって。ってかビデオ通話しちゃうよ」
「え?え?もう?ちょっとまって心の準備が・・・」
できてない。私は岸田くんのマウスを持つ右手を止めたが
すぐに顔を私に向けて軽く睨んだ。
「そうやってグズグズしてると余計に緊張しちゃうから、こういうのは
ささっと勢いよくがいいんだよ。いいかい!」
そして岸田くんがクリックしたら待ってました!とばかりに
岸田くんのご両親と画面上のご対面。
うちの親とは比べ物にならないぐらいの美人とダンディーなご両親だった。
この親ならこんなイケメンが生まれてもおかしくないって思ったが
そんなこと言える余裕はなくがっちがちな私。

岸田くんが私をご両親に紹介すると
画面のむこうのご両親はかなりハイテンションな様子で
私に話しけかけてきた。

「一美さん!会いたかったわ~~」
「あっ・・・は・・はい」
「本当はこんな形ではなく直接会いたかったけど・・・
 今度帰ったら一緒に飲みにいきましょうね!」
・・・な・・なんだか自分が思っていた事とはかなり予想が外れたというか・・・
こんなにフレンドリーだとは思わなかった。
驚いていると岸田くんが会話に入ってきた。
「母さん、いきなり飲みに行こうとか・・友達じゃねーんだけど・・
 昨日、一美のご両親に結婚の許しを頂いたからさ・・・
 俺・・・彼女と結婚する。」
少し照れながら話す岸田くんの横で私はパソコンの画面に映る
岸田くんのご両親に深々と頭を下げた。
「一美さん」
今まで黙っていた岸田くんのお父さんが口を開いた。
「はい」
「本当に滋でいいのかい?」
「父さん!な・・何言ってんだよ。いいに決まってんだろう。」

慌てて反論する岸田くんに対してお父さんは真剣な顔で
お前に聞いているんじゃない。とぴしゃり
そして視線を再び私に向けると優しい顔で話し始めた。
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