右隣の彼
取引先の会社を出て歩いているが会話はなし
時計を見るとお昼を少し過ぎていた。
いつもなら岸田くんが気を利かせてくれて
先輩、お昼どうします?今日俺、○○な気分なんです。
って一緒にお昼を食べたりしていたが
今日はそんな様子はなかった。
そんな時カレーのいい匂いが鼻についた。

カレー食べたい。
そう思うのだが岸田君は前を真っすぐ見てカレーの匂いにも無反応だ。
多分こんな状態でお昼誘ったところで
淡々とした口調で断られるか、一緒に食べたところで会話もなく
黙々と食べるんだろうな・・・そう思うと一人で食べたほうが気が
楽に思えた。

「岸田君」
「はい・・・」
ほら・・無表情・・・
「私、お昼食べてから社に戻るから・・・」
岸田君は一瞬顔を歪ませたがすぐにわかりましたとだけ言って
歩いていってしまった。

「なんなのいよ!本当に可愛くない・・・岸田のバカ」

結局一人でカレーを食べたがやっぱり一人は寂しかった。
いつも一緒に笑って食べてくれる人がいないのがこんなに寂しいと
思ったことはなかった。
あんな態度、絶対わざとだってわかってる。
わかっているけどそれに自分が翻弄されてるのが悔しかった。

美味しいけど・・・おいしくない
カレーってこんなに感情で左右される食べ物だったっけ?
結局高速でカレーを食べるとそのまま帰社した。
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