右隣の彼
会社に戻ると既に岸田君は自分のデスクで仕事をしていた。
いつも外回りの時は一緒に(周りからはじゃれあってる様に思われている)
帰ってくるのに別々なのが珍しかったらしく
課長に呼ばれてしまった。
「何ですか?課長」
「岸田が人が変わった様に仕事してるじゃないか。ま~元々出来る方だけど
 冗談も言わずにまじめ過ぎるじゃないか。津田お前なんかあいつなんか言ったのか?」
・・・・きっとみんなが岸田君の様子が変だから課長に言ったんだろうな。
「何も言ってませんし、あんなに真面目なら私の補佐じゃなくても
いいんじゃないですか?今日の打ち合わせも彼一人で十分。ばっちりでしたよ」
ちらりと岸田くんの席を見ると課長と私の会話が聞こえていても
何も言わずにPCのキーを叩いていた。

やっぱりムカつく。
「課長、岸田君だったらもう一人で大丈夫だと思いますのでコンビ解消
 考えといてください」
「あ・・ああ・・わかった」

私は自分の席に戻り仕事を再開した。
だが岸田君はその後も私と会話することなく定時にそそくさと帰った。
帰ったから少しは気が楽になったと思っただが、気がつけば
岸田くんの事ばかり考えている自分がいた。

何となく帰る気になれず
一人残業をしていた。
何かの拍子に視線は右隣を見ていた。

今まで意識しなさすぎだったのかな・・・・
「悔しいけど・・・いつもみたいにしてよね。これじゃストレスたまるよ」
机に言っても仕方ないのだけれど・・・

この日を境に岸田君とは必要以上何も話をしない、単なる後輩で
右隣の人になった。
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