右隣の彼
しかも問題はそれだけじゃない。
私が岸田君は一人でも大丈夫って言ったもんだから課長は
本気で私たちのコンビ解消を打診してきた。
たしかに今の岸田くんなら一人でも大丈夫だと思う。
思うけど・・・課長は、岸田君に今年入社した、若くて可愛い女の子を
岸田くんのアシスタントにするって言ってきた。
自分で言ってしまった手前、やっぱりこのままでとは言えないって言うか
いいだしっぺなのに・・・
そして一番驚いたのは、私がコンビを解消するのを凄く拒んでいる事だった。


なんか心身ともに疲れた・・・

この日私は少しだけ仕事が残っていたけど
定時であがった。
そして・・・今私はなぜか岸田くんのお兄さんのお店の前にいる。
ここに来てどうにかなる訳でもないけど・・・
店の前で入ろうかどうか悩んでいた。

「あの・・・何か御用ですか?」
後ろから声をかけられ振り向くと
「あっ!」
思わず声が出てしまった。
声をかけてきた女性は私の事など知らないけど
私はよく知っていた。
だが、その女性も少し驚いた様な顔で私を見ていた。
「あの・・・もしかして津田先輩?」
「岸田くんの義理のお姉さん?」
同時に尋ねて、同時に頷いた。

彼女は私が津田一美だとわかるととてもうれしそうに微笑んだ。
めっちゃかわいい・・・
「あの、入ってください。ここ駿君のお店・・・・っていうか
知ってますよね。しげちゃんとここに来てくれたんですよね。
お時間あるなら入ってください。私凄く会いたかったんです。」
とびきりの笑顔で誘われたら・・・・断れませんて・・・

私が頷くと彼女はとてもうれしそうに民家の玄関みたいな店のドアを
開けたのだった。
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