右隣の彼

ライバルには気を付けよう

「津田君」
出社して間もなく課長に呼ばれた。
「おはようございます。課長何かありました?」
課長はいきなり手を合わせて立っている私の機嫌を伺うような目つきで私を見た。
課長がこういう顔をするときって大概お願い事なんだよね。
それもあんまり引き受けたくないような仕事なんだよね~~
「今日ってなんか大事な打ち合わせとか入ってる?」
「今日はデスクワークですけど・・・」
「実はさ~。打ち合わせがブッキングしちゃったんだよね。どっちも大口の取引先で
 こっちの都合でキャンセルできないんだ。」
・・・・課長って仕事はできるんだけどこの手の凡ミスが多くて
その尻拭いを私や夏さん、酷い時には岸田君までもがさせられる。
だからと言ってできませんとは言えないから渋々引き受けるんだけど
「もしかして課長の代わりに行って来いと?」
課長は手を合わせて何度も頷いた。
何でも手を合わせれば誰かがやってくれると思ってるところは少々ムカつくんだけど
文句は言ってられない。
「ちなみにどこへ行けばいいんですか?」
課長は急に表情を柔らげファイルを差し出した。

その社名を見てこっちの都合でキャンセルできないとすぐにわかった。
「え?coco studioって課長が担当してたんですか?」
老舗陶器メーカー、九重陶器は5年前まで経営悪化で倒産寸前だった
だが社長が息子に変わってからデザインを一新、ターゲットを独り暮らしや
若い夫婦向けに絞り社名も九重陶器からcoco studioに変えたことにより
売り上げが伸びて人気メーカーとなった。
今回、coco studioとうちの会社のスイーツがコラボすることになったが
cocoの社長というのがイケメンなのにかなり口が悪いということで有名だった。
ブッキングしたのでいけませんなんて言った時には・・・あの社長の怒った顔を
思い出したらどんなことがあっても断れないだろう。
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