偽りの香りで
「お前の香り、あいつと似てるけどやっぱ違う。甘くてちょっとエロくて女っぽくて。いつもとのギャップが相当でかくてやばかった」
「は?」
彼の言葉に頬を染めると、彼が困ったように私の髪を撫でる。
「俺、あいつと別れたばっかでまだ気持ちの整理とかついてないんだけど……でも、お前には俺の前以外でその香り漂わせないでほしいって思う。勝手だよな」
それは“彼女”の香りを纏った私ではなく、私自身として少しは彼を魅了できたということだろうか。
「勝手でもいいよ」
つぶやくと、彼が私の耳を唇でそっと食んだ。
吐息を漏らし震えると、彼がきつく私を抱きしめる。
勝手でもいいよ。
今は、まだ。
だけどいつか、そう思ってもいい――…?
彼の腕に抱かれながら、私はそっと目を閉じた。
― Fin ―


