矢野さん
「あーごめんね。煙草の煙ダメな人なの?」

 ニッコリ笑顔で矢野に問うが、内心矢野の顔面に煙を吹き掛けてやりたいと思っている。

「好きじゃありません」

 俺の笑顔攻撃が通用しないのか、鋭い視線のまま矢野が答えた。

「そうなんだ。ごめんね」

 腸わたが煮えくり返るのを押さえながら、笑顔を矢野に振り撒く。

 コイツに好かれるのは面倒だが、この俺に対して反抗的な態度は気に入らない。

 俺の笑顔で矢野を落として大人しくさせてやろう。こんな奴すぐ落とせる。

 俺はこの時、軽い気持ちで簡単にそう思ってた――。

「そんな冷たい目しないでよ。可愛い顔が台無しだよ?俺、矢野さんみたいな子タイプなんだ」

 満面の笑みで全く心にもない台詞を吐く。

 ブスはこんな台詞言われ慣れてないからイチコロだろ。

 そう思っていると、矢野はさっきまでの鋭い目からニコッと嬉しそうに笑った。

 ほら。やっぱり――


「私は橘さんみたいな人、大っ嫌いなタイプなんです」

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