矢野さん
「なに？田中さん橘狙ってんの？」


「やだー。やめてくださいよー。恥ずかしい」


　頬に両手を当て、困った顔をして上目使いで赤崎を見ている。


　そんな田中さんに赤崎は声を出して笑った。


「アハハ！無理無理！止めときなよ！」


　さっきまでぶりっ子していた田中さんの顔がムッとした顔になる。


「コイツ、彼女にゾッコンだから。一回振られてんのにめげずにアタックして手に入れた彼女なんだぜ？他の女なんか目に入らないよ」


　そう言うと、赤崎は俺の肩をポンと叩いた。


「え！？橘さん一回振られたんですかー！？」


　驚いた顔をして田中さんは俺を見る。


「もう昔の話だ。俺もう戻るから」


　コーヒーが入ったカップを持つと給湯室を出た。
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