矢野さん
「い、いりません!」

 そう言うと強引にチケットを返してきた。

 なっ――!?

 俺が嫌いなのはわかるがお礼と言ってる物を返されると流石の俺も傷つく。

 どんだけ俺の事嫌いなんだ――!

 俺が矢野に何したってんだよ!

 積み重なった苛立ちを押さえきる事が出来なかった。

「やるって言ったらやる。俺の事嫌いなのは知ってるから一緒に行く必要はない。俺だって矢野さんとなんか行きたくないから」

 ……あっ。

 矢野は目を大きく見開き驚いた様子で俺を見ていた。

 その瞳はまるで哀しみに揺れている様にも見える。

 違う……。

 こんな事を言いたかったんじゃない――。俺は――!

「そうですか……わかりました。ありがとうございます」

 笑顔で矢野がそう言い部屋を出ていったが、矢野の瞳はどこか切なさがあった……。

 なんであんな哀しい目をするんだよ……。

 俺の事嫌いな癖に――。

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