緑の風と小さな光 第1部
セレは高価な装飾品を持っている。

だが、ほとんどが両親や弟、ヴァシュロークから贈られた大切な品だ。安易にそれらを売ろうとは思わない。

金貨も持っているが、今の身なりで出したところで『何処で盗んだ?』と言われるのがオチだ。


村落が見えてきた。今度の村の方が人が多い。農家の規模も大きい。

「農場で働くのもいいかもな。」

セレもエルグも体を動かすのは大好きだ。

どこで働こうか、と村を見ていて目に付く物があった。

どの家にも戸口や窓の辺りに、小皿に入れた白い粉が置いてある。

「砂糖?塩?それとも小麦粉…?」

「何か意味があるのかしら?」

そんな話をしながら、ある家の前を通り過ぎようとした時

「小麦ってのは昔から石臼挽きが1番て決まってるんだ!」

「臼は使うさ。機械で動かすだけだ!」

「そんなの機械油で臭くて食えるか!風車に限る!」

「いい加減にしろよ!時代遅れもいいところだ!」

「何だと!」

怒鳴り合う声。

そして、ガシャン、ドスン、と大きな音。喧嘩になっているらしい。

いきなりセレ達の目の前のドアが開いて男が飛び出して来た。初老に見える。

その人物目掛けて、あとから出て来た男が殴りかかった。
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