緑の風と小さな光 第1部
「バアさん、客人だ。」

「客人?」

怪訝《けげん》な顔で言葉を返したのは人の良さそうな老婆だった。

「旅してるんだそうだ。一晩だけ泊めてやることにしたよ。」

「お世話になります。俺はセレ。こちらはピアリ。」

老婆はピアリを見て

「まぁまぁ。可愛らしいお嬢ちゃんだこと。いらっしゃい。」

と手招きした。

「お腹は空いてない?」
「お風呂は?」
「寝間着はあるの?」

ピアリに付きっきりで世話をする。

セレには

「あんたも適当にね。」

関心が無い。

「よく似た感じの孫がいるんだよ。滅多に来ないがね。…お前さん一杯やろう。」

少し早い晩酌が始まっていた。ツマミには野菜の漬物と油で揚げた魚があった。

「王宮の近くに娘夫婦が住んでいるんだ。あちらは都だから何かと便利だろうよ。私の名はロスター。一晩だがよろしくな。」

「こちらこそ、よろしくお願いします。ロスター、収穫、いいお名前だ。」

「あんたこそ。セレ、風、だろ。綺麗な名前だ。風の魔法使いか?」

「はい。その通りです。」
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