緑の風と小さな光 第1部
セレは一礼して窓から王の部屋に入った。

半月の薄明かりの下、弟と再会した。

「…ここまでして私に話したい事とは何だ?」

王の問いにセレは答えず、おもむろにストールを外した。

「ヤール、立派になったな。」

「あ…!?」

もう国王ではなく、セレの弟の顔になっていた。

「兄様…どうして…」

そう言うのが精一杯だった。

「ヴァッシュ様の魔法さ。一度だけ。今夜だけだ。朝になれば、元の白骨死体だ。」

嘘をついた。

「明日の誕生会、気を付けた方がいい。魔法使いを酔わす特別な酒があるそうだ。知っているか?」

「いいえ。それは初耳です。」

ヤールも勉強不足だ。

この酒の事はヴァシュロークの魔法書で調べた。確かにあるのだ。

「その酒でお前を酔わせて、隙を作って殺す、という噂を聞いた。」

「…わざわざそれを言うために来たのですか?ヴァシュローク様の魔法で蘇生できるのは一度だけなのでしょう?しかもそんな危険を冒して…」

ヤールはセレの右腕を見た。血がダラダラと流れていた。
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