屋形船、ゆるりゆるりと。
「信号待ちをしていたら、突然例の童たちがわぁーっと現れてな。ああ、イカンと思う間もなくシャボン玉に吹かれてな」


私は、結び目のほどけたキツネの面をしっかりと結い直して差し上げました。


シャボン玉に捕まると、どう抗ってもシャボン玉から逃れることはできないのです。

シャボン玉に閉じ込められたまま、飛ばされてしまうのです。


ある者は下水に流され、またある者は小学校のプールの消毒槽に浮かんでいたそうです。


「それにしても、わしゃ運がよかった。屋形船に拾ってもらえるとはな」


キツネ面は心底ほっとした様子です。

「あんたはこんな池で何をしておった?」



私は温かい梅昆布茶をキツネ面にすすめました。


「鯉を待っていたのです。昔、ツツジの精に恋をした鯉がこの池に・・・」


梅昆布茶をふうふうしながら、キツネ面は面の下から上目遣いでこちらを見ました。
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