屋形船、ゆるりゆるりと。
「その鯉の話なら、わしも子供の頃昔話で聞いたなぁ」


ずずずっと音をたてて、キツネ面は梅昆布茶を飲みました。

面の下の喉仏がごくりごくりと動きます。


「鯉が惚れとったツツジは、人間の男に惚れていたんだろう? なんだかやるせないねぇ」


キツネ面は、ほぅ、とため息をつきました。

「鯉を見つけてどうするね?」

「魚拓をとります。高く売れるのです」

私は、なんだか悪いことを白状しているような心持ちになりました。



「ふはは」

キツネ面は豪快に笑いました。

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