カラ恋
「今日は何描こうかな……」

この、グラデーションが綺麗な空を描こうか。

冬の終わりを感じさせられるように、空が暗くなる時間は日に日に短くなっている。

この赤と黄色と青の色を塗り重ねて、綺麗な色を生み出すことができたならどんなに素敵なんだろう…。

私はいそいそとリュックからスケッチブックを取り出そうとした。

そう、出そうとしたんだ。

──ビュッ

「ひゃっ…!?」

突如吹いた強い風に、私の髪がバサッとなびく。

反射的に、片手でそれを押さえ込むようにした私。

その髪がふわりと落ち着いたとき、私の視界の端で、白い何かがキラリと輝いた。

「これって…ノート?」

こんなに近くにあったのに、全然気づかなかった。

私が座る窓際の机と同じ横列。

2つほど離れたその机に置いてあったらしいノートが、先ほどの風に吹かれてめくられていた。
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