カラ恋
放課後のノート

輝く風に吹かれ

「あ、窓開いてる……」

教室に入ってすぐに吹き抜けた爽やかな風に、私はポツリとそんなことを呟いた。

誰もいない教室の中。吸い寄せられるように1人、窓際のほうへと近づいていく。

夕方とはいえまだ少しだけ明るい色の空が、私がいる教室の中を綺麗な色で染め上げていた。

素敵な色だな。と、そんなことをふと思った。

カタン、と音をたてて、机によっと腰をおろした。

イスよりも机のほうが、外の景色が見やすいんだ。

見下げるグラウンドに響く笛の音とともに、サッカーボールを追いかける男の子の姿が目に入った。






美術部の活動が終わった帰り。

私は、部活の時間だけでなく、この放課後の時間も絵に費やす。

誰もいない教室で、誰にも干渉されることなく絵に没頭できるこの時間が、私にとっての癒しだった。
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