絶対に好きじゃナイ!
「虎鉄とはどうなってんの?」
「え? ど、どうって……」
どうなってるもなにも、社長は仕事中は鬼のように恐ろしい。
あのオフィスには一応社長室というのがあるけど、彼はほとんどみんなと同じフロアで過ごす。
怒鳴り散らしたりすることは決してない。
だけど、薄茶色の瞳を鋭く細めてとっても精悍な顔つきをした社長はド迫力だ。
資料を提出にいくのも、社長がリラックスしてる隙をついてサッと済ませるようにしてる。
ときどきなら怒られないけど、小さなミスでも連発するとスッと細められた目で言われる。
「気合が足らん。俺が入れ直してやろうか?」ってね。
「し、慎重にやってますよ。怒ると怖いのは知ってるので……」
「はは、だけど梨子ちゃんには滅多に怒らないことも知ってるだろ?」
まあ、それは昔の話で。
あの"西城虎鉄"を呼び捨てにしても、敬語なんて一度も遣ったことがなくても、髪を引っ張ったりぽかぽか殴ったりバカとかなんとか暴言を吐いたり……
とにかく、あの頃の社長は小学生の生意気なわたしが何を言っても絶対に怒らなかった。
一度だけ、例外があったけど。
「でもそれはもう昔の話です。今は、事務所の社長とただの部下ですから」