絶対に好きじゃナイ!

「あー、ごめん! 今朝資料庫に戻してきちゃった」

「あ、わかりました。取りに行ってきますね、青くて大きな本ですよね?」


そう言って梨子ちゃんはオフィスを出て資料庫に向かって行った。

まあ、資料庫って言ってもオフィスを出てすぐそこなんだけどね。
あんまり使わない資料や昔の案件のデータとかが置いてある部屋。



そして梨子ちゃんがオフィスを出て少ししてから、今度は社長が俺のとこに来て言ったんだ。


「あいつ、資料庫行ったのか?」

「え? はい、俺が昨日までデスクに置いてた資料取りに行ったんですけど……」

「わかった」


そう言うと社長まですたすたとオフィスを出て行った。


あの人、何しに行ったんだ?

たぶん梨子ちゃんのとこだろうけど、まさか仕事中に資料庫でいちゃこらはじめるわけじゃないだろうし……


一旦手を止めて首を傾げて少し考えると、俺はそこでやっと気が付いたんだ。


「ああっ、やべ!」


そして俺も、梨子ちゃんと社長の後を追って資料庫にダッシュした。
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