絶対に好きじゃナイ!

「それでは、失礼します」


まだフロアに残るみんなにあいさつをして、わたしは勇んでオフィスを出た。

今日こそは、素敵な男な人を見つけなきゃいけないんだもん!




地方の女子短大に通っていたわたしは大学2年間なんの出会いもなく、そしてなにより短大は忙しかった。

単位のために真面目に学校に行っても就職状況は厳しくて、就活はなかなか上手く行かなかった。


「久しぶりだな、梨子」


そんなとき、突然あの社長がわたしの前に現れたんだ。

実は社長とは実家が近所だった。
8歳も離れてるから、学校が一緒になることはなかったんだけど。
地元でちょっと有名な男の子だった社長は、わたしのことをよく可愛がってくれた。

有名というのは、"よく悪さをする"という意味だけど。

顔にはいつも小さな傷があって、ケンカもしょっちゅうだったんだと思う。
それから、女の子関係も。
所謂、不良ってやつ。


「新しく事務と広報をやってくれる子を探してるんだ。うちの会社に来ないか?」


上手くいかない就職活動。
特にやりたいこともないし、正直新卒で正社員採用してもらえるなら御の字だった。

わたしはその誘いに飛びついたってわけ。
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