ショコラノアール~運命の恋~
「あの子の作ったケーキ……」


箱の中に飛び散った残骸を掌でかきあつめて

口に運ぶ


美味い。……と思う。

けど、何より自分が情けなくて、

ぽたっ……


なんだよ泣いてんのか?


口に残骸をもう一度入れて頬張った。


ヨーグルトベースの甘酸っぱい味が口の中に広がった。

美味い。

彼女が箱に入れてくれたときには、

きっときれいにデコレーションされて、

こんなぐちゃぐちゃでは無かったはず

それなのに……


咀嚼するたび、

リキュールの香りが

まるでさっきまでの俺を責めるように、

俺を刺激する。


彼女が一生懸命作ったケーキを折角くれたのに俺は、

他の女の子に胸ときめかせ、

こんなとこに置き去りにして、

その上こんなにしてしまった。

馬鹿だ、俺は馬鹿だ……

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