YUMERI〜女のコにはユメとキボウがあるのだ!〜
遺言から始まる物語
桜井よねには時間がない。病室の外からは楽しげな子供の声がする。ふと、子育てに追われていた若き日を思い出す。そして、その子供達が親になった日を思い出す。孫への想いに胸が塞がれる。今の自分はただベットに縛り付けられた老女。視線がさまよい、日めくりカレンダーに目が留まる。あぁ、今日の分をめくっていない。いや、昨日の分もかも知れない。日にちの感覚が鈍くなった。枕元のメモ帳に手を伸ばす。自分の腕の細さに驚く。五人も子供を育てたのにね、と自嘲気味に考えた。引き出しに確かボールペンがあった…。手探りで探し、見つけ、メモ帳に書き始めた。伝えなければならない事を。子供達に。孫に。あと三ヶ月で生まれるまだ見ぬ孫に。取り付かれたように書き続けた。徹夜した。よねにとって、最期の夜だった。
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